300年使った茶碗は300歳になる。住まい手の心があれば家もいい年齢を重ねていく。 陶芸家・デザイナー 大樋 年雄 Q.米国で暮らしていたことがあるそうですね。 「ボストンです。金沢よりも暑くて寒い街です。多くの人がアパートメント・マンションに暮らしているのですが、冬はTシャツ1枚でいいほど暖房がきいている。夏はエアコンで寒いくらいですね。いわば家に四季がない。金沢の家には季節がある。暦もあります。だから冬の寒いときは家族がなんとなく一カ所に集まったり、親が温かい料理を作ってくれたりしますよね。お正月やお盆には親族が集い語らう。手を合わせたり、尊敬の念を抱いたり、正しい言葉を遣ってみたりもね。家が現代的になりすぎると、そういうものが失われるんです。家の進化といいますが、人間を退化させているものを果たして進化と呼んでいいのか。最近のモダンとされる家は神棚や仏壇を置く床の間もありません。その床の間を上から足で踏み歩くような二階をつくっている。間取りがどうこうという話の以前に、人間の発想としてまちがっていますよね。先祖に感謝していないような人たちがそこに住んで、子どもが生まれて、いい子どもに育つわけがないと思います。正座をすることの意味。先祖を奉ることの大切さ。親を敬愛することの尊さ。家が家らしくあることで人間性が育まれる。とりわけ日本の家はそうだった。今後もそうであってほしいですよね。」